なすのヘタ
棘が刺さった。
親指の平になすのヘタ。
黒くってちっこいのが、ぽちっと。
痛みもちっぽけで、気にするもんでもないが、
チクチクなるんが、いちいち気になる。
昔おばあちゃんが言っていた。
「棘は危ないんやで、血管を移動して心臓に刺さったら逝ってしまう」
だから、このちっぽけな黒い棘を抜かんとダメ。
いつもなら縫い針やピンセットでつまみ出す。
やけど、この部屋にはありません。
あって当たり前が、一人暮らしの家にあるわけない。
家を作るってのは、あーやこーやして必要なもんを揃えてゆくもん。
完成された家から出てきて、一から家を作らないかん。
失敗しては修復して、はじめから備えられとったんは生命力だけ。
そんな備えがあるなら、棘は諦めたろか。
アルコールないと眠れんし、小腹が空いたんで、うどんでもこさえる。
具は、わかめと鶏肉とキノコ。
鍋でグツグツ煮て、そんまま鍋からツルツルと口へ。
夜食ってのは何でこう美味いのか。
うまい。うまい。
うどん食べてたら、
いつも隣でゲームしてる人が毎朝食っとった
フルーツグラノーラを思い出す。
ああ、あの光景が一番すきやったなー。
もう新聞屋さんのカブのエンジン音。
この時間みんな何してるのかな。
約束をすっぽかされたアーティストは、怒ってるかな。
死にたがりのあの子は、寝床をちゃんとみつけたんかな。
オイラは文字を吸い込むばかりで、慌てて吐いたよ。
夜です。
もうすぐ朝がくるのに。
今は、ちゃんと夜。
2009年
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